芹沢先生の本は、自分のような素人にやさしく、楽しく読める。

素数入門―計算しながら理解できる (ブルーバックス)

素数入門―計算しながら理解できる (ブルーバックス)

 

いろんな意味で、(マイナス)×(マイナス)=(プラス)になることの説明が、参考に成る。

【引用開始】【引用終わり】

要は、推移律※で、対称性を導入して、それから説明しているに過ぎないのだが(だから、本質的には、絶対値から説明するのと同じで、対称性を持つからそうなる、と言っているに過ぎない)。細かな点だが、「証明」と言わずにあくまで「説明」と言うのも、そういったことと関係あるだろうか。
※A≻B≻CならばA≻C ≻は、  の記号

これは非常に興味深い説明で、マイナスの計算は、小学校から中学校に上がって(いままでの慣れ親しんできた算数とは、何かが異なる※)数学を学ぶときの最初のハードルとして有名だが、ここで、「敢えて(実は不必要なー上記推移律A≻B≻CのBの)アイデアを加えて」(もちろん、数学的な形式を逸脱することなく)説明している点がよいのである。実は労を取って言い換えただけで無内容なのであるが、言い換えてでも説明して納得に近づける営為が大事なのである(答えを出す計算だけではなく、説得の技術であることを知れる)。
※算数と数学が同じと考える人には理解できないでしょうが。むしろ、その算数=数学の考えの延長にある、マイナスの計算の、算数指導的手法の「お団子計算」で説明しようとするのは数学的には明らかな誤りで(しかし、実際に、算数は、素朴な実感をもたらす、具体物を対象に計算することを、その範疇に持つ。)、算数=数学と考えるのは弊害がある。

ちなみに、別の方法との比較で言うと
👇では、「ピーコックの原理」を使って説明

抽象代数の歴史

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数学 その形式と機能

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現代数学小事典 (1977年) (ブルーバックス)

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 👇〈点と位地〉に関して※対称性から考えるのだけれど、数学をそもそもメタファーの集合と考えていて、マイナスの掛け算については 複合的なメタファーと考える(P118)。

数学の認知科学

数学の認知科学

 

 ※ここらへんは「オイラー解析学」の矩を超えずに数学の範囲で考えている。
👇オイラーの、4つの関数。実は、オイラーも、この"新しい数学"を始めるにあたって、メタファーで説明している(個人的にはすごく驚いた。オイラーほどの天才でも、そんな言葉足らずな、もたもたした説明をするのか、って)。

無限解析のはじまり―わたしのオイラー (ちくま学芸文庫)

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なお、もっと驚くことに、オイラーはマイナスの掛け算については、こう述べるのである。

(-a)×b=-abなのだから(-a)(-b)=-abではおかしなことになるので、+abでなければならない

ー数とは何かP71

本当に『素朴』である。一方インド人は、明快である。
 👇『負数乗数の場合、負数性とは逆性のことであることを思い出そう。したがって、負数乗数というのは逆乗数であるから、被乗数の逆繰り返しを行うということになる』クリシュナ(P21数概念の起源)※ 

数とは何か そしてまた何であったか

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数の発明 (岩波科学ライブラリー)

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 ※若干の補足として、「被乗数」「繰り返し」という言葉からわかるように、(少なくともこの説明中では)掛け算の順序を当然のこととしている。

どうも概念理解という点においては、アジアの方が先んじていたようである※。もっとも、欧州が数学の先進地になるのはずっと後だから、そのようなことなのかもしれない。初等数学に関しては学ぶ一方で、あまり関心を寄せなかったのだろうか。

※余談だが、概念語である中国語(と日本語の違い)

 
いや、でも『素朴』と述べたのであるが、何を言えば抽象的で、何を言えば一般的なのか、と考えると、言い換えるなら、対称的であるがゆえに数直線を与えるとそれぞれの位置があるのか、それぞれの位置があるから対称的なのか、を考えると、数直線というのは一つの具象であると思えてくる。案外、オイラーは、真理をついていたようである。つまり、対称的とは、数の定義に含まれる、例えばある操作の回帰性と謂った、演算規則でしかない(表現され得ない)ではないか。

数とは何かそして何であるべきか (ちくま学芸文庫)

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アリになった数学者 (月刊たくさんのふしぎ2017年9月号)

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『 「算数」は数や図形を便利に使う方法を教えてくれるが、「数学」は数や図形を使うだけではない。「数や図形がそもそもどのようなものか」を考えるのだ。』