坊ちゃんは無礼な輩か

 『坊ちゃん』は(実体験に根差しつつ)古典的人物造形に依拠しながらも、近代小説の骨格を試験した、おそらく実験小説で、人物の彫琢が際立っている。戯画的である、という意味で、「居そうで居ない」。

こころ 坊っちゃん (文春文庫―現代日本文学館)

こころ 坊っちゃん (文春文庫―現代日本文学館)

 

 坊ちゃんは、同僚を命名するのだけれど、これは坊ちゃんが大人になる前の無頼者だからであって、逆に言うと、分別の在る者がすると違和感を持たれる、幼稚なしぐさである。つまり、相手の人格をコミカライズして薄っぺらく、機微、奥行や背景を無視して、失礼なのである。

「正男」と呼ぶときに、そのような扱いだっただけである。そのような心理的抵抗や距離感を抱いていたのをごまかしていただけである。

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目を吊り上げてどうする。
ソ連の人々の笑顔を見て、「あぁ、彼らは、共産主義を信頼しているのだ」と云うようなものだ。彼らがソビエトを止めた時に、「君たちは、あんなものを信じていたのか?もちろん、我々は誰一人として共産主義なんて信じていなかった。当たり前だろう」と彼らが云うのを聞いて、驚いてどうする。