動員(通過儀礼)から参加(   )へ                          民主主義のための新しい語学                                             国民統合のための『国語』ではなく

 

我妻は、師である鳩山の研究に依拠したドイツ法由来の解釈論を発展させて、矛盾なき統一的解釈と理論体系の構築を目指すとともに[7]、資本主義の高度化によって個人主義に基礎を置く民法の原則は取引安全、生存権の保障といった団体主義に基づく新たな理想によって修正を余儀なくされているので、条文の単なる論理的解釈では社会生活の変遷に順応することはできないとした上で、「生きた法」である判例研究の結果に依拠した法解釈を展開した[8]。このような我妻理論・体系は、鳩山、末弘、穂積の学説を総合したものといえ、理論的に精緻であるだけでなく、結論が常識的で受け入れやすいとの特徴があったことから学界や実務に大きな影響を与え続け長らく通説とされた[9]。

我妻の生涯の研究テーマは「資本主義の発達に伴う私法の変遷」であり、その全体の構想は、所有権論、債権論、企業論の3つからなっている。

後掲「近代法における債権の優越的地位」は1925年から1932年に発表された論文を収録したもので、債権論と所有権論がテーマとなっているが、その内容は以下のとおりである。前近代的社会においては、物資を直接支配できる所有権こそ財産権の主役であったが、産業資本主義社会になると、物資は契約によって集積され資本として利用されるようになり、その発達に従い所有権は物資の個性を捨てて自由なものとなり、契約・債権によってその運命が決定される従属的地位しか有しないものとして財産権の主役の座を追われる。これが我妻の説く「債権の優越的地位」であるが、その地位が確立されることにより今度は債権自体が人的要素を捨てて金銭債権として合理化され金融業の発達を促す金融資本主義に至る。我妻は、このような資本主義発展の歴史をドイツにおける私法上の諸制度を引き合いに出して説明し、このような資本主義の発達が今後の日本にも妥当すると予測した。

我妻は、金融資本主義の更なる発達によって合理化が進むと、企業は、人的要素を捨てて自然人に代わる独立の法律関係の主体たる地位を確立し、ついには私的な性格さえ捨てて企業と国家との種々の結合、国際資本と民族資本との絶え間なき摩擦等の問題を産むと予測し、企業論において、会社制度の発展に関する研究によって経済的民主主義の法律的特色を明らかにするはずであったが、その一部を含む後掲『経済再建と統制立法』を上梓したのみで全体像は未完のままとなっている。上掲のとおり我妻の予測は現代社会にそのまま当てはまるものも多く、「近代法における債権の優越的地位」は日本の民法史上不朽の名論文とされている[10]。

我妻栄 - Wikipedia
 

近代法における債権の優越的地位 (1953年) (学術選書〈第1〉)

近代法における債権の優越的地位 (1953年) (学術選書〈第1〉)

 
経済再建と統制立法 (1948年) (法学選書)

経済再建と統制立法 (1948年) (法学選書)

 

 

www.nichibun-g.co.jp

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実は憲法民法典論争と繋がっている。
憲法の前に憲政あり。憲法は主権決定の言葉の政治。民法は体制(近代化=資本主義化)決定の言葉の政治。そして、体制は主権者によって担われる。
一見わかりにくいが、実は、国家主権に拠る専横と「市民」の求めるレッセフェール(放任的自由主義)が議会に於いて結実することを避けることに焦点があった。
天皇主権」は、"法学者にとって"は、国家主権に拠る"ビスマルク的専横"を抑止する希望であり、一方で、法学が社会科学化(自由主義への反省から社会主義へ移行)する嚆矢だった。言葉(概念)だけ見ていてはわからない。大日本帝国憲法の成立によってこのひとつの「反体制(反憲政)」の闘争はつかの間の勝利を得たが、やがて美濃部の議会工作が成功して「解釈改憲」(実際は、憲法から憲政へのBacklashバックラッシュ)が施され国家主権に 引き戻された 、、、、、、 ) 。美濃部のこの、法廷ゲームに模することのできる、自由心証主義(経験則に基づいた合理的を裁判官たちに求める。この議会工作に於ける「経験則」とは理解のできるわかりやすい言葉(即ち、『則』)による説得という主体化体験のことである。)と弁論主義はやがて草の根運動を経た新しい「主権者」たちの「『経験則』に基づいて」覆される、入れ子構造を導くこととなった。
ドイツの物語と日本の物語の併走を見なければこの歴史が見えてこない。

1814年に『立法と法学に対するわれわれの時代の使命について』を著して、ドイツの法学は民法典を制定するまで成熟していない、法学を成熟させることこそ先決であると説き、アントン・フリードリヒ・ユストゥス・ティボーとの論争(法典論争)に勝利した。(フリードリヒ・カール・フォン・サヴィニー - Wikipedia
c.f.歴史法学 - Wikipedia ヘルマン・ロエスレル - Wikipedia

天皇主権が社会主義(経済的平等思想)を帰結するのが直感的にわかりづらかったら、👇を補助線に引くとよいかもしれない。
貨幣の自由(流通)は、超越的な何かしらを必要とした。 

日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)

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自分のよりどころとする歴史観は👇一言で「ぐだぐだ」やっていることの連続
言い換えるなら、経緯的。
そのような、「思想」ではなく「観」なら在る

応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)

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あと👇。カーニバル的社会観
青木さんって自称「左翼」だけれど、講学的じゃなく、日常感覚の話で、むしろ「豊臣びいき」のような、徳川の天下になびかない庶民文化じゃないかと思う。 

ナニワ金融道 1

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  • 作者:青木 雄二
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  • 発売日: 2015/11/05
  • メディア: Kindle
 

 

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美しい夏 (ベスト500レビュアー) 5つ星のうち5.0
青山学院大学史学科五〇周年記念シンポジウムの単行本化+論点形式のコラム24個・・

大変面白い。 2020年1月18日社会主義国家の崩壊により、唯物史観マルクス経済学の権威が失墜し、明治史の分野でも、戦後日本の主流となっていた唯物史観大きな物語による通説が崩れてしまった。その結果、これまで無視、軽視されていた領域、地域、団体、人物、生活、人間関係等、または別角度からの検討に研究の方向が向かったが、今日、細分化、多様化しすぎて、全体像がとらえにくくなっている。今後引き継ぐべきものは引き継ぐ一方、史料に基づく実証的研究、学際的研究、当時の国際関係を考慮した研究を進めていく必要がある。 

明治史研究の最前線 (筑摩選書)

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