例えば、対馬をキューバと見立てたら、面白い。
キューバはアメリカが独立直後からずっと気にしている戦略的要衝であって。
対馬が大陸政策上の戦略的要衝であったことを想像しやすい。
より正確には、合衆国経済の機関化を追及するケネディ政権と、キューバの旧支配者であるシャドー・バンキング・システムとの対立が深まった。
(高麗)人参にどれだけの取引があったかと言えば、かなり実績があったみたいで、明治初期には、取引量のベストテンに入る重要品目のひとつだったらしい。主要輸出先が中国だけれど、実は日本が増産して追い抜くまで日本以上に取引していたのがアメリカという事実がある。
その横には、当時イギリスが把握していた阿片市場があって、日本は阿片市場への参入も狙ったが、こちらはなかなか難しかった(ここにモルヒネを巡る、星一の奮闘がある)。
江戸時代、対馬は人参の密貿易の拠点だった。
そこに関係していたのが、幕末近い頃なら、金沢の銭屋五兵衛であって、(そればかりではないけれど)「海の百万石」と呼ばれた。
もちろん、銭屋五兵衛の創案ではない。
それ以前からあったことだ。
対馬と密貿易と国際通貨市場と八幡船のことだ。
だが、本山美彦は、歴史的経緯から、堂島米会所は「幕末の金融システムを破壊した」元凶である、とミラーの発言を批判している
(堂島米会所 マイクロ・ストラクチャーとヘッジ機能 ~天保五年(1834)より元治元年(1864年)の分析~/慶應義塾大学総合政策学部. 2021年3月30日閲覧)
そうすると、新井白石と荻野の争いは、国際秩序を重視するか、国内秩序を重視するかの立脚点の違いとも言え、元祖「大日本主義」と「小日本主義」の争いと言えるかもしれない。
当時の国策の主流であった「大日本主義」を批判するものとして提唱され、政治的・経済的自由主義と結びついていた点に特徴がある。満韓放棄論とも言った。
その見方が正しいかどうかでない。
よりダイナミックな歴史の動きを捉えられるか。
顕微鏡の中にだけ歴史があるのではない。