四齣漫画のアイデアを出すことになった。
才能がまったくなく考えても無駄なので、考えずに済む方法を考えてみた。
こうやって見ると、起承転結 - Wikipediaのことではないか、と後から気付いた。
小学生の読書感想文って本当はこういう作業だったんじゃなかろうかとふと思った。
ずいぶん昔に「東大の授業で『ドストエフスキーって誰ですか?』と聞かれた」というエピソードが狭い範囲で話題になったことがあり、大体の人たちは「教養の崩壊」を嘆く論調だったが、野崎歓さんは「ちゃんとわからないことを質問する学生が頭が悪いわけがない。(続)
— kubota (@kbtyskvit) 13 maart 2020
そうか。なら古典を紹介するか。
1.逆さオチ(落ちが落ちて、腑に落ちる)
『死ぬなら今』
【構造】 | 【主題】 地獄の沙汰も金次第 |
【エピソード】 (吝嗇と阿漕) |
【トリック〈焦点〉】 偽〈金〉 |
【帰納】 死ぬなら〈今〉 |
---|---|---|---|---|
〚構成〛 | 〚取り立て〛 意味 |
〚狂言回し〛 倒叙 |
〚振り〛 照応 |
〚下げ〛 無意味 |
解説 | 「生」の「利」 | 「正」の「理」 | 金の意味がない | 生の意味がない |
齣割 | ① | ② | ③ | ④ |
考えオチ(意味₍が₎落ち₍る₎)でもある。
吝嗇のケチ兵衛が今際の際に枕もとの息子に託けた。阿漕なことをしてきたものだから地獄行が仕方ないとは言え、地獄の沙汰も金次第と聞くから、今まで貯めた三百両を棺桶に一緒に入れて手向けてくれ。息子が素直に言うことを守って棺桶に入れようとしたのを既のところで止めたその縁者が言うには、三百両に何のお咎めがあって地獄に落ちるのか。見せ金で飾ればよいではないか。息子もそうだと合点がゆき、葬送も早々に三百両とも今生の別れとその縁者ともども宴会を始めてしまった。
そうと知らず、ケチ兵衛が、贋金を後生大事に抱えて閻魔大王の前へ進むと、大王は、生前のすべての悪事の目録が載っている閻魔帳を眺めて、宣った。お前の生前の罪は許しがたいが、ここで功徳を積めば、功徳はわかるな云々。なるほど、ここはお白洲というよりも関所で、現代のさながら免税店のごとく、死後の、罪という義務が免除されてカタログショッピングできるらしい。
すわ、抱えているものを差し出すと、大層喜んで、やにわにその金で盛大に宴会を始めてしまった。黙っていないのが極楽庁の役人で、極楽以上に極楽なのが許しがたい。閻魔大王以下地獄の門番を全員「贋金造り並びに行使に関する罪」で別件逮捕して極楽へ連れて行ってしまった。
さて、あれから400年。そろそろ閻魔大王の放免も近いという噂が地獄で持ち切りだそうです。早くしないと地獄に帰って来てしまう。
どうです。死ぬなら、今。
2.しぐさオチ(身振りが落ちる)
『死ぬなら今』
【構造】 | 【主題】 我田引水 |
【エピソード】 |
【トリック〈焦点〉】 慧眼 |
【帰納】 炯眼 |
---|---|---|---|---|
〚構成〛 | 〚取り立て〛 擬態 |
〚狂言回し〛 |
〚振り〛 反対 |
〚下げ〛 正体 |
解説 | 悟り | 煩悩 | ||
齣割 | ① | ② | ③ | ④ |
飄なことから蒟蒻屋の六兵衛が和尚の振りをして諸国を巡って修行している若僧の道場破りを受けることになった。商いから世間、世知に通じた六兵衛と雖も、身振りの真似が精々で言葉が追い付かない。ところが若僧は無言の行と感心して、そのまま(いちいち説明不要の)禅問答が始まった。若僧が両の片手で二つの小円を作れば、六兵衛が両手で一つの大円を作る、両手の十本の指を立てれば、片手の五本を立てる、三本の指を立てれば、1本の指で目の下を押さえる。
恐れをなして逃げ出した若僧に顛末を聞くと、阿弥陀如来の印を結んで中品中相(即ち、法。或いは、悟りの入り口)を問えば、大日如来の法界定印(人と仏の調和)※で応えられ、十方を問えば五戒で応えられ、三尊の弥陀を問えば、慧眼(仏眼)で応えられたので敬服したとのこと。
六兵衛に真意を質せば、小さいかと聞かれたので大きな蒟蒻だと胸を張り、それなら十丁でいくらだと虚仮にされたので五百文とことわりを入れ、三百でどうだと猶も迫られたので赤目で睨んで去なしたとのこと。
三尊の弥陀(悟り)は慧眼(仏眼)にありと言ったとて、炯眼(赤目)にありとて、三毒の煩悩(貪欲、瞋恚、愚痴)。
※釈迦如来の禅定印(悟り)も同じ形。
ちなみに、仏教では、慧眼をエゲンと読むらしいが、炯眼と対比させたかったので、あえてケイガンとルビを振った。
〈参考にしたい〉
日本の代表的4齣漫画
『のらくろ』
戦前の「島耕作」。実は国民の欲求に忠実に描かれたらしい。
『サザエさん』
『ちびまる子ちゃん』
『コボちゃん』
『がんばれタブチ君』
『ぼのぼの』
『コージ苑』
相原コージ。
デビュー以来「1回まわっておもしろい」を追求する相原コージの快作。大河四齣というジャンルを作り出し、その人気は、『ねるとん紅鯨団』で石橋貴明が真似をするほどであった。
『伝染るんです』
吉田戦車。
当時その雰囲気と影響力から「漫画界のダウンタウン」と呼ばれた。
『What's Michel?』
小林まこと。1984-1989
猫のアルアルと気まずい猫が踊ってお茶を濁す現在なら間違いなくSNS映えするネタが当時でも受け一世を風靡した。『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』が放映を開始して『面白ビデオコーナー』が人気を博すのは1986年(から)であったから、特別でない日常の特別な数分(コマ)を全国人気まで押し上げたのは『What's Michel?』が先だった。コントで志村さんがマイケルの着ぐるみで登場してオチとなったこともある。マイケルもビデオ投稿もアメリカに輸出され日本と同様に人気を獲得した。
『ストレッサーズ』
内田春菊。
ハイカルチャー化する村上春樹をしり目に、『ノルウェイの森』と類似のモチーフで、「男(おやじ)目線」の男を嫌悪して遂には抹殺した、決してフェミニズムではない女性の言葉に拠る少年漫画。中尊寺ゆっこの一見突飛な『おやじギャル』が高度経済成長を経て就業女性がBGからOLと呼び習わされてきた社会文脈を逸脱しないのとは一線を画す。後年川上未映子は『フラニーとズーイ』を(大阪弁で)訳したが、村上春樹を意識してのことだろう。
他にも、和田ラジオさんとか。
〈最近のもの〉
沖田✖華
けいおん
working
すみっこぐらし
毎日でぶどり