高校生の「公民(政治・経済)」資料集                                                            行政機関説事件

なんでかわかった。
美濃部と芦部とよう似ていると思ったら、美濃部の弟子が宮澤で宮澤の弟子が芦部じゃねえか。
似ているどころか、「内孫」じゃねえか。


【経緯】
要は、(戦前からの)「憲政派」と「憲法派」の争いが美濃部ー芦部の学説を梃子に続いているって話。美濃部はイェリネックの学説を「エエとこどり」しただけだし、芦部はアメリカの学説を「エエとこどり」しただけだから(だから、それをちゃんと継承して発展させたケルゼンのことはむしろ批判する。いやいや、あんたが、ご都合主義なだけやで。もともと(公法の)比較法制史だからこのひと。上杉はドイツで気付いた。)、憲法を読むとどうしても齟齬が出てくるってこと。
つまり、「行政機関説」を「天皇機関説」の代わりに吹聴しているってわけ。
戦前は議会が騙された。戦後は大衆が騙されている。
芦部『憲法』の摩訶不思議な解説※は👇がベースとなっている?
アメリカ人が作ったんだから、アメリカ人の考え方から演繹するのが、フツウではないかと思う(ただし、双子の憲法ボン基本法の換骨奪胎ぶりはどうであったか。議院内閣制の規定⇒なぜか、大統領制の復活)。あれをそのまま読んでも初学者には「天皇大権」への対抗が意図されていることはわからない(そこらへんの素人への説得技術も美濃部ゆずりだろうか。同じように成功している

皇室典範天皇の大権、議会や内閣の制度に関する論点などが提起された。』
美濃部意見書 1945年11月8日 | 日本国憲法の誕生


【要点】
忖度力を発揮して、どういう問題があったかを簡単に振り返りる。

『世論』⇒高校生の使う教科書『公民(政治・経済)』からで、ここでいわれているのは『政治』のこと(憲法の解釈ではない)。

内閣府の図⇒憲法学の標準的な解釈にある「一元説」(国民から国民に戻るサイクル)の図示

「準司法機関」⇒検察官は独任官制を採る、というときの、「独任官」の話で、したがて、☆の図 に従えば、「準」+「司法」+「機関」と分解できる(それぞれ「正」「行政」乃至「立法」「」。このとき、『すべての司法権』から『(ただの)行政権』をいわば量化(『すべて』)作用から区別する、"三権分立"における、防御的機能に鑑みた時に、自律性乃至自立性(例えば、議院の自律権、弁護士自治)が問題となる(「機関」の実在問題)。
検察官の独立性と独任制の行政庁であること - 略本雑記

【論点】
「行政機関」(の多義性)と「司法機関」の独立
司法権の所属と裁判官の職権の独立〕
憲法第76条① すべて司法権は、最高裁判所及び~
     ② ~行政機関は、終審として裁判を行うことはできない
     ③ すべて裁判官は、その良心に従い独立して~
👉特に、行政事件の最終判断について
最高裁判所の規則制定権〕
憲法第77条①
     ②検察官は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない
     ③
👉『ただし、これは検察官の資格・身分に関する定めを規則の所管事項とする趣旨だと解されてはいない。現実に、検察官は究極的には法務大臣の指揮監督権に置かれている(検察庁法14条)。その意味では、これは、訴訟手続きにおいては検察官も裁判官とともに公正な裁判に向けて協力すべき義務を定めたものであり、そしてその限りでは、むしろ行政権との関係での裁判所の自主性および独立性を保障するもんであると言える』(基本法コンメンタール[第四版]憲法
〔裁判官の身分保障
憲法第78条

(補足ー行政法上の位置づけ)
A.行政主体の意義と種類
 行政主体(抽象的存在)ー国・地方公共団体 c.f.行政客体(私人)
 行政機関(自然人)  ー行政を行う地位。
             行政庁、補助機関、参与機関、諮問機関、監査機関、
             執行機関、議決機関
 行政組織(機構)   ー行政機関の総合的・体系的集まり
B.行政機関の意義と種類
 組織法的意義(行政組織法)/作用法的意義(行政争訟法⇒行政庁)
C.行政機関相互間の関係
 行政庁の権限の監督ー監視権,認可権,訓令権,取消・停止権
D.権限争議の決定
 国に関しては最終決定は内閣総理大臣閣議にかける
E.内閣及び各省庁
 内閣法と国家行政組織法 

【まとめ】
三権分立」と謂うときの司法権とはつまりは裁判所(並びに裁判官)に属する話であり、行政機関である検察官は十分協力しなさい、という話であって、規則遵守義務に(終審判断が裁判所に附属することと併せて)ついにはに集約されることで、あくまでそのような裁判所の独立が本質なのであった。
即ち、日本における「三権分立」とは、そのような機能(権能)の総体であり、存在(素朴実在)認証ではなく、機能を中心とした実在認証なのであった。

ただそうしたところで、所詮は「誰かが」「法案を提出」するのであるから※、些末な手続き論に収まる話で、本質的には問題とならない。
即ち、誰が提出しようが、所詮は「定年の延長」である。
※ちなみに、法務省:裁判所法の一部を改正する法律

なお、若干の余談として、司法権の独立に関する美濃部説を信じる者は今や主流ではない。