今日の国語

なるほど。添削されている。

面白いので、取りあげようと思ったが、やめた。

「意識の流れ」系の文章を、要は、感慨をだらだらと書き綴る文章を、「論じる」文章に直すということらしい。

物ごとや主張することを筋道立てて説明し、特定の課題やテーマを解決すること 

「論じる」の意味と使い方・上手に論じる方法|レポート/書き方-言葉の意味を知るならMayonez

主張に対して挙証(理由付け)が説得的であればよい。

そのために、言葉の意味を正しく理解することも必要だ。そうでなければ、言葉と言葉を正しく繋げられない。

部活動ガイドラインの策定により教員の部活動への取組に対する意識が変化してきていることから、さらに業務改善を進めることができると考えたからです。

三重県教員採用試験論述問題解答例より(抜粋)

L1 さらに業務改善を進めることができると考えたからです【主文】
L2  ↳教員の部活動への取組に対する意識が変化してきていることから
L3   ↳部活動ガイドラインの策定により

という枝構造となっている。

わざとこういう修飾関係にしているのか、混乱する書き方を自ら選んでいるのだろうか。

L1' 進めることが - さらに・できる - と考えたからです
   ↳業務改善を

L1とL2のつながりが弱い。「変化」から「改善」へ繋いで、改まっているのだから変化なのかというと、事実から評価を導く誤謬となっている。評価からしか評価は導けないので、あらかじめ与えておく必要がある。
そうすると、推移的に、L3→L2→L1と、自然に導ける。
すなわち、L3のうちに(すでに)評価を含んでいなければならない文章構成をとっていることがわかる。

或るいは、これは結論の文とも関係するが、主体的な判断を挟んで、事実から(判断を経て)評価を与えている文章となっているかもしれない(結論の文では、「図る」にそれが表れている。)。

実は、「ガイドライン」からは

行動指針を社員に意識してもらうことで浸透していきます。

行動指針を定める意義やメリットとは?従業員にビジョンが伝わる指針の作り方を解説 - lafool mindfulness

意識の変化を読み取れるのだが、この場合、微妙な文章と成る。

組織として正しい行動が規定されるので、評価基準が明確になり、従業員のモチベーション向上をはかることも可能です。

文意としては、ガイドラインの策定により、業務改善の端緒についているのである。
L2の文章が、解答例の場合、効果乃至経緯の描写で在り、添削案の場合、敷衍である。
このとき、ガイドラインの策定の意義に関して語意から敷衍している。

わかりやすくすると、

【解答例】「により」文(依拠)から効果の観察へ

L1 さらに業務改善を進めることができると考えたからです【主文】
L2  ↳現に教員の部活動への取組に対する意識が変化してきていることから判断して
L3   ↳正しい行動基準を策定したことにより


【添削案】「から」文(起点)から推移の反映へ

L1 さらに業務改善を進めることができると考えたからです【主文】
L2  ↳教員の部活動への取組に対する正しい認識が浸透しはじめたことを以て
L3   ↳部活動ガイドラインの策定から


【添削案】でも事実(経緯)の観察を含んでいるが、基本構造が、推移的である。

 

これら【解答例】と【添削案】の違いは、おそらく、〈判断〉すべき主体の取り扱いの違いだろうと思う。
【解答例】への全体的な違和感は、実のところ、判断主体を自己に置いて、「判断しました」という報告、「判断します」という主張になっているから生じたものだろう。
その理由が説得的に述べられなければならない。
それは例えば、先ほどの

組織として正しい行動が規定されるので、評価基準が明確になり、従業員のモチベーション向上をはかることも可能です。

赤字強調は引用者。
であったりを挿入することとなる。


L1 具体策を実施して
業務改善を進めることができると考えたからです【主文】
L2  ↳評価基準が明確になることで教員の部活動への取組に対する意識変化を促すので
L3   ↳正しい行動基準を策定すれば


こうすると、出題されている「具体的に述べる」叙述へ円滑に進むことができるのではないだろうか。主体の判断をテキストの外へ出し、述語を説明する主語に置き換えて、主体の判断の内容をテキストから理解できるようにしなければならない。
それが実証的な文章であって、主体の判断をテキストに残すと、同じ経験から共感しなければならなくなる。そうすると、一般的な理解が難しくなってしまう。


難しいもんだね。
このままだと、

 

 誰のことをいうとんねん

 

他人事か、となるので、「私」が述べる文章へと整えますけれど、解答例は、受験者ではなく、解答例を作成した人の立場が如実に反映されとんなっていうね。
そもそも違う立場でモノを言っても仕方がないので、バッサリ行きます。
ここでは、直す必要があるかについて言っていて、なんでこういう解答例になるかを考えたときに、PISAの「論述」問題でも、内実、語彙問題に過ぎないのだが、施策として出題者の立場上受験する者に当然に知っておいてほしいタームを説明してしまっているからだと思う。

すなわち、「部活動ガイドライン」と「SSS(スクール・サポート・スタッフ)」を知識として知っているかを見たいだけで、論述する必要がないのだ。

論述するには不要に思える文章が、不自然に出てくる理由がこれだろう。
そもそも動機がそうであるから、直しようがない。