憲法学上の基礎知識

ホッブス、ルソー、ロック、+カントですよ。この人たちは、空想を語っていたわけではない。それぞれの現実が張り付いていたわけです。

国権(国家の統治権)は、憲法に基づき、国家が引き受ける多くの事務に応じて、権限(公務)として各種の機関に分配されます。社団の構成員たる国民の一部のものは、法人の機関に公務員として就職し、彼らに分配された公務の範囲内においては、それぞれが国家法人それ自体の意思として、公務を遂行する、という形になります。国家法人にも、通常の法人と同様、定款(憲法)によって、法人の意思を最終的に決定するための最高機関が用意されているはずですが、大日本帝国憲法の下では、それが天皇だと説明されました(天皇機関説)。

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*3 まず、国家三要素説によって、ドイツ帝国とそれを構成する君主国を、あくまで近代的な「国民国家」の論理によって説明しました。そのもとで、ドイツ帝国については、国家主権説を用いて、対外的な独立性と対内的な最高性を論証する一方、構成国からは、主権的存在としての資格を剥奪し、帝国の監督下におきます。ただし、構成国には、固有権としての「国権」を一定程度確保して、国家としての面子をたてた上で(国家三要素説によれば、国家であるためには、国民・国土・「国権」を備えていれば足り、「主権」は必要とされない)、「自治権」からは、固有権としての資格を一切剥奪して(伝来説)、「国家」と「自治体」との間に一線を引きます。

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さて

「近代以前のヨーロッパ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


れる時代の話です。」
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要は、フランスのことですね。

憲法を「国家」とのかかわりで定義する伝統的な見解は、19世紀ドイツにとっては不可欠だった、ある特定の「国のかたち」を暗黙のうちに前提にしているからです。もちろん、これに対する批判は、当時から存在しました。日本の教科書でも紹介されている固有権説(自治体の権力が、国とは別個の正統性を根拠とする、「固有権」であるという見解)は、フランス型の主権国家を解体して、もう一つの「国のかたち」をめざしたものでした。しかし、通説の伝来説を打ち破ることはできませんでした。わざわざ憲法自治体の「自治権」を保障している場合にも、いわゆる制度的保障制度的保障説は、自治権の「固有権」性を明確に否定してきました。元来、憲法制定権力の基本的な決定は、権利主体としての資格を個人に限定する立場にたっており、むしろ自治体のような団体の権利に否定的なのであって、憲法典が自治権を保障するのは、本当はおかしい。だから、当該規定は、それを、歴史的な経緯から暫定的に約束したという程度の意味しかもたない、という考え方です。これはもともとワイマール憲法の解釈論として説かれたものです

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これは(あくまで)フランスを参照点として、19世紀のドイツの歴史的に形成された国家像に基づく憲法観を見ているのだけれど※1、こういった憲法学上の知見、というか、常識を、どれだけ知っているかな?というところであって、たったこれだけの「憲法史の概略」を見ても、ポイントがいっぱいあるでしょ。要は、

  1. 大日本帝国憲法は「天皇主権説」を採用していたところ、
  2. ドイツ法学の影響を受けた「国家主権説」に解釈改憲をして、
  3. それを「天皇機関説※1と嘯いていたに過ぎない。
  4. 要は、「不磨の大典」というのは、政治的スローガンに過ぎなかった。
  5. それを遂行したのが美濃部達吉であって(最初の「革命」:法的レジテマシーの変更。)、その弟子が、戦後「8月革命説」を唱えた※2
  6. そして、それは、「美濃部系」の学者には違和感のないことであったのは、師匠がそうだったから、と私は思う※3

※1 天皇制限主権説—「主権」は制限されることだろうか?(cf.「〇〇的云々」と謂えてしまうこと。)→ゲオルグ・イェリネック - Wikipedia

※1 「像」というのは、実際に立ち上がった国家の観察、「観」というのは、それを説明する認識のことをここでは言っています。

その「像」とはビスマルクが実際に対処した政治的現実のこと→オットー・フォン・ビスマルク - Wikipedia

※2 この教科書では、宮澤俊義の唱えた「8月革命説」についても、憲法制定権力から説明しているけれど、ここでは割愛します。

※3 この記事を書いたのは、その直系の石川健治・木村草太の2人です(美濃部達吉—清宮四郎—樋口陽一石川健治美濃部達吉宮澤俊義芦部信喜高橋和之—木村草太)。

解釈改憲」なんて「最初」(明治)から「あった」事実なんだよ。

それすらよく知られていないというね。
普通の人には、憲法なんて、読めません。

みんなドイツ人にコロッと騙されちゃうんだね。上杉はわかったんだよ。
あぁ、ただの口説だなって。あと新渡戸稲造とかね。『武士道』なんてそうですからね。事実に「合っている」かどうかじゃない。それを「共有できる」かだけであって。
明治の人はタフだったからというのもあるけれど、田舎の山奥から出て来た、貧乏庶民の美濃部には、ちょっと理解できずに、この人、一生後悔したんだけれど、仕方がない(そもそもその師匠の一木になると、てんでわからなかったというね。考えてもわからないから留学したが、やっぱりわからなかった)。
穂積って、エリートの中でも、格別だったんだよね。やっぱり、士族って、エリートなんだよ。


次の朝ドラは、その穂積の一族が出てくる。我妻が出る前の第一人者。

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