大正新教育の真骨頂にして「現代の謎」

田中ビネー知能検査(V)を参考に考えてみます。
田中ビネー検査法の特徴を一言で説明すると

『何が知りたいのか、誰をどうケアすることが重要なのか』

田中ビネー知能検査V理論マニュアルP109
3-1 田中ビネー知能検査Vの活用法・1何のために知能検査を行うのか(目的の明確化)・(2)何を知りたいのか

になると思います。

なお以下は、すべて私の個人的な見解(勝手な理解)であって、田中ビネー知能検査Vを受検する際に指示乃至指導される内容、授検するにあたって指示乃至指導される内容を反映していません。 


さて実際の設問例ですが、取り上げるのはやめておきます。
(テスターと呼ばれる専門的な訓練を受けた者の指導のもとに行われなければ検査の意義を損ないかねないことは述べておきます。)

ただ、こういった国語の教材の取り上げ方で、実際に何が問題となっているかを考えたいと思います。

まず、前提として、

①作者の気持ち

②登場人物の気持ち

は異なることです。

そして、

❶情景の理解

❷文の理解

❸文章の理解

は異なることです。

これを踏まえたいと思います。

文部科学省が学習要綱で述べていることは、語の作用から登場人物の気持ちに該当する箇所を選び出すことであったり、その際に、書かれている内容の意味を理解して、別の表現を指示できることだろうと思います。田中ビネー知能検査Vの検査項目を例として挙げると、

❶については、『絵の解釈』『共通点』

❷については、『文の完成』『語の意味』

❸については、『話の記憶』『話の不合理』

などが該当するでしょうか。小学生の教科の特徴として一般的に、具体的な例が示せ、身の回りのことや日常の生活で起きる実際の体験を通じて得られる理解が求められますから、このうち、私が着目したのが、❷『文の完成』でした。

 

これは、接続助詞がブランクになっている所謂「穴埋め」問題ですが、語の作用を理解しているかを、日常会話の表現を通して問うています(回答に先立って問題理解の補助に例示される最も単純な文の構成ですら、実は経験を通じて理解していることに気づきます)。実際には1問1問でそれぞれ

(1)構造を与える語

(2)状況を与える語

の2つを問うていて、(1)では1字の接続助詞を一意的に答え、(2)では複数字の接続助詞または複数の助詞をつなげて答える自由解答となっています(複数解答例あり)。

難度を徐々に上げてゆきながら、意味の通る文を完成させるのですが、このとき、「意味が通る」とは、語と語を接続することの意義が一貫していることですから、注意すべきなのは、ブランクとなっている箇所以外の語の作用や意味の理解です。難度が上がるのは、語の作用による文の構造理解の方です。

知能テストは基本的に(巷間誤解されている「頭の良さ」よりも)社会性を問うものだと思いますが、これが日常会話を用いることでよく表現されていると思います。
そのような社会性が順序良く問われることに特徴があると思いました。

これは真に驚くべきことですが、 

私は上の本も購入して持っていて、時間が掛かっても、(本当にたまたまでしょうが)間違えることがありませんでしたが(自慢ではありません。私は国語が得意でないために、勉強のために購入したのですから)、同じように文の構造を考える問題にしても、田中ビネー知能テストVの方がよくできているようです。

実はしばらく語用を主に問われていると勘違いしました※。日常会話を用いていても、実は一方で問うているのは文の構造への理解で、(1)では誤答例を挙げて厳密に正答を制限して曖昧な理解を許容しません。同問中で問われる(2)については、求められているのが文の指示する可能な場面の設定を試行する想像力ですから、語用が問われていると考えて差し支えないかもしれませんが、実は(1)と対になって文の構造を与えますので、問題の質から複数解答例があるとはいえ、(1)で与えられる語の作用の意義に呼応する一貫性を損ねるわけにはゆかない程度に制限されます。

※正答してなお問題の意図について幾分かの勘違いをしていたようで、10歳向けの問題とは言え、この問題の質が素晴らしいものであると私は思います。
文の構造を問うているのですから、私の場合、数式を扱うように書いて意味付けの確認をすればわかりやすかったのですが、そうできないところが、(日常会話の利用と相まって)語用と受け止めさせたのだろうと思います。

 

一休みします。