公定力と取消訴訟の排他的管轄

「一行報道」くらいしてもイイとは思うけれど、そんなに大した話ではない。

要は、前例があって、それに倣った形式規範上の話であって。

日本は法源として判例法を採らないのだけれど、前例が羈束的に働くことが法の常識である。
たった、それだけの、ベルトコンベアーに乗った話に過ぎない。

ただ、これを政治的に云々する、要は、小池行政批判に使うのは「アリ」だとは思う。
行政学上は、「明白の原則※」に抵触する可能性があって、すぐに覆されるような決定は、行政に原則的に求められる安定性を損なって弊害がある。「法による行政」をくすぐる話ではある。

※明白に違法な決定は無効である。原理的には手続きを経ることなく無効であるが、一般的に私法ならば確認訴訟という手ある、今件のような行政事件の場合、管理物なので、実際の問題として、訴訟手続きを経なければ、行政の本源的に有する「公定力」の利益が消尽しない。

(つづき)抗告訴訟取消訴訟)等の手続によって取り消されない限り、原則として他の訴訟の先決問題においてその訴訟の受訴裁判所を拘束し、当該受訴裁判所は、審理の過程でこの行政行為が違法であるという判断を得たとしても、これを有効なものとして扱わなければならないことになるのである」(C-Book 行政法<第2版> (PROVIDENCEシリーズ))

要は、正式に取り消されなければ、取り消されるまで有効であるから、順番を無視して「いきなりYに返還を求めてもダメ」(〃)ということである。

問題の所在

公定力の制度的根拠についていかに解するか  AAランク

これについては、

  1. 違法性推定説(または自己確認説)(従来の通説)
     いやしくも権限を有する行政庁が公共のために行った以上は、その行政行為は裁判所の判決同様の権威を有し、適法性が推定される。
    (批判)
  2. 反射的効果説(現在の通説)
     公定力は、取消訴訟制度が存在する結果として反射的に生じる効力に過ぎない。
    (理由)

(前掲PP.102-103)

反射的効果説の理由を略したが、抜粋すると、「行政上の法律関係の安定を図るため」行政行為の適法性否定を取消訴訟に限定する取消訴訟の排他的管轄(それ自体を争う特別の取消訴訟でなければならない。)を認めているということである。

取消訴訟の排他的管轄の

  1. 紛争処理の合理化・単純化機能—救済制度として効率的
  2. 紛争解決結果の合理的担保機能
  3. 他の制度効果との結合機能—不可争力における出訴期間など

2がよくわからなくて、裁判を増やすと裁判所の資料が増えるのはよいとして、「行政行為によって意図された行政目的が行政庁の知らないところで覆滅されることを防ぐことができる」とはどういう事例を言うのだろう。