アゴラさんの記事って党派性があるなあとは思うものの、他のメディアや日本学術会議の騒ぎを起こしている法学クラスタが逆方向に振っていることを考えると、こちらからも見るべきかなと思います。ワタシも日本国憲法第23条の保護法益を履き違えてると見てます。
— 彡Baku@旧Rigel鯖 (@mitarai_baku) October 5, 2020
https://t.co/XFjaQfRVtR
いかがなものか。
①憲法解釈として、➁議論の仕方として。
の双方にかなり違和感を覚える
☟比較対象(取り上げ方が失礼なのは誠に申し訳ございません。)
日本学術会議は研究機関でもないし、研究予算の配分等についても権限を有する訳ではないし学問の自由と関連付けて批判するのは無理筋です。むしろ学問の自由との関係で問題にするなら日本学術会議による2017年3月の「軍事的安全保障研究に関する声明」の方が自由な研究への悪影響があると思います。
— 山口貴士 aka無駄に感じが悪いヤマベン (@otakulawyer) October 5, 2020
いや、学術会議が国民の一般的感覚からすると違和感を抱かれるのは仕方がないと思うが(なお、挙げた成果を評価しようとする天文学者さんもいらっしゃるようだ)。
専門書を読んだことがないので、学生用参考書を見て。憲法判例はどこ行ったっけ、と探していたら、 興味深い本があった。誰が書いたのだろうとを著者を見ると樋口陽一先生じゃないかね。
雰囲気を知るにはこれほどおあつらえの本はなかった。
自分が所有しているのは第2版。
いきなり考えても混乱するので、まず「憲法議論」のウォーミングアップ。
「男女同権」は憲法上何の権利か
この問いを見て「は?」となるだろうか。なって当たり前。そもそも専門家でない自分の発問が悪い。申し訳ない。
要は、①憲法第24条の文言は、それ自体の人権か、➁憲法第13条の反射的意味かを問うている。
問いの裏を見ると、①に関して「『個人』と相並ぶ『男女』の価値を憲法上許す」ことから所謂「家族条項」が問題となり得る、➁『男女』が『個人』の例示であったとしてもそれが類推か拡大かの判断に根差した制限的な解釈で在るかどうかの議論を通じて、「LGBTと非LGBTの平等」が問題となり得る、と言える。
これが「憲法議論」の効果であると思う。
もちろんそれに先立って在る「憲法議論」の標準的な作法としては、そもそもいままでどのような解釈が為されてきたのか(学説上、判例上ー判例は学説の一つを採択、或いは判断に影響を受けて、確定効果を以て制度を形成する。)を見たうえで、その有効性を批判的に述べることが在るだろう。
それらを無視していきなり、(きわめてユニークな)独自解釈を主張されても「反応の仕様がない」ーそう「仕様」がないーのである。
面倒くさくなってきたのでかいつまんで言うと、「学問の自由」は、自治の自由を尊重している(つまり、憲法構成文脈上「結社の自由」は憲法第21条であり、「職業選択の自由」は憲法第22条、「学問の自由」は憲法第23条であることをアタマの隅に置く。このとき、この条文の並びを評価するべきか云々があって、実はけっこうご都合主義だったりする※。「結社の自由」は精神的自由権、「職業選択の自由」は経済的自由権、「学問の自由」は精神的自由権で、精神的自由権は経済的自由権に優越すると解される※1ーこういうご都合主義を指摘できたらまだ興味深いーつまり、憲法9条の解釈は(通常の法解釈、憲法解釈から言っても)「超然解釈」であるーとなかなか憲法学者は思わないのであるが)。
※憲法解釈は結構「危ない橋」を渡るのであって、個別の条文の解釈を論理的に平衡することは躊躇われても単なる並び順に過ぎない構成からする解釈の平衡は躊躇わない不思議な感覚で読まれることはしばしばあって、直接援用するのは当然に慎まれるにしても、何かしらの意図をほのめかすことは在るように思うー直言されないので読者が「思う」に過ぎない。印象を持つ。これは通常の法律解釈の「禁じ手」である(はずの)「成立経緯からの解釈」にも通じる話である※2。
※1 上掲の樋口先生の本(著者は、樋口陽一+大須賀明。)は大抵の方が目にしたことがないと思うので興味深い箇所を抜粋すると、
[学問の自由]
第二三条 学問の自由はこれを保障する。(総司令部案)第二二条 学究上ノ自由及職業ノ選択ハ之ヲ保障ス
(改正要綱)国民ハ総テ研学ノ自由ヲ保障セラルルコト
(外国憲法)西独5条③ 芸術及び学問、研究及び教授は、自由である。教授の自由は、憲法に対する忠誠を免除するものではない。日本国憲法資料集第2版P72
ボン基本法を挙げるところがさすが、樋口である。そうして本の(方の)構成上は憲法第26条の「教育を受ける権利」に接続してゆく。こういった憲法の「斜め読み」に慣れて行くのが法学徒である。
※2 ちなみに、篠田教授からはこれがお得意であるような印象を受け、それにも違和感を覚える。
芦部は好きじゃないけれど、まぁ、いいや。自分が所有しているのは初版。
憲法岩波書店初版1993年、新版1997年、新版補訂版1999年、第3版2002年、第4版2007年、第5版2011年、第6版2015年、第7版2019年
芦部は1999年のなんとか末に亡くなっているのに、まだ版を重ねるんだねぇ。
どういう仕組みなんだろ。内容や文言が変わることはほぼないだろうし。今時原版の劣化ってあるのかしら?
「初学者用」「大学生用」ばかりじゃなく、本当はそれ自体の専門研究を目にできればよかったけれど。
いい加減部屋の掃除したい