今日の国語

PISAの「読解力」から考えられるか。

  • PISAの「読解力」
  • 国語の「読解力」
  • 実証主義の「読解力」

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PISAの指定する「読解力」の定義は以下のとおりである。

自らの目標を達成し,自らの知識と可能性を発達させ,効果的に社会に参加するために,書かれたテキストを理解し,利用し,熟考する能力。

1 PISA調査における読解力の定義,特徴等:文部科学省

それで今回のことで注目したのが、このこと。

日本の15歳が「読解力低下」!?OECD調査があぶり出す学校教育 | ニュース3面鏡 | ダイヤモンド・オンライン

 「読解力」問題の中には、大きく①「情報を取り出す」設問 ②「理解する」設問 ③「評価し、熟考する」設問があるが、日本の子どもが特に悪かったのが③「評価し、熟考する」ものである。「このような文で終わるのは適切だと思いますか」「どちらに賛成しますか」「適切ですか、適切でないですか」「理由は」「あなたは原因を何だと思いますか」など、取り上げられている事柄を多面的に評価したり批判したりすることを求める設問である。

PISA「読解力」15位の要因を探る-原因の特定と改善の方向性 | 国語の授業研究ノート

それについてこう分析されている。

 私は、「読解力」低下の主要な原因は、日本の国語の授業のあり方にあると考える。今回特に重視された「質と信ぴょう性を評価する」「矛盾を見つけて対処する」ことを大事にするような国語の授業が、日本ではそもそも極めて少ないということが大きく関わる。小学校、中学校、高校を通じて、文章や作品を評価したり批判したりする授業、そしてそれについて論議したり表現したりする授業が圧倒的に少ないのである。

(同上)

批判的の読むための初歩的なテキストとしては

論理的に読むための初歩的なテキストとしては

論述するための初歩的なテキストとしては

今回のことに関しては、「新稲本」がとりあえず参考になると思う。
大人が受ける試験であるから、もう少し必要で、特に文法に関してであるが、ただし、体系的に理解するというよりも、個別の事情に応じて、参照的に理解することが望ましいだろうと思う。例えば、より/からの区別である。「区別して理解しなければならない」のではなく「対比することで理解できることを理解する」ということである。主張が散漫になるのを防ぐためである。

パンデクテン方式 - Wikipedia
ローマ法大全 - Wikipedia
カズイスティック(決議論)」とは

今度どのように行動すればよいかとの質問に対し、回答者が道徳的な見地から複数の選択肢を挙げて指針を示すというような形でなされていたこともある。

小説の誕生を促したとも言われる。

決疑論 - Wikipedia

それはよいとして、さて、実際に日本の高校生が不得意とされた問題形式は以下のとおりである。

2018年調査問題例(読解力) (PDF1.48MB)
OECD生徒の学習到達度調査(PISA):国立教育政策研究所 National Institute for Educational Policy Research
OECD生徒の学習到達度調査(PISA)の調査結果:文部科学省

 

問題点がわかりやすい出題例である。
ここで求められているのは、「推測」である。
「推測」とは何か、一言で言うと、想像力であり、飛躍である。
しかし、それが、合理的であって説得できるものでなければならない。
要は、ここに書かれていない、ということに尽きる。
「推測」に対比されるのは何か。
「演繹」である。

導出もまた、言葉の意味に関わるものと事実に関わるものに分かれる。言葉の意味に関わる導出を「演繹」、事実に関わる導出を「推測」と呼ぶ。
順に説明しよう。
P56,5.2 演繹と推測,論理トレーニン

これで、わかる。
かの「添削案」で示したのは、「演繹能力」(へ近づく方法)であって、「解答例」で示したのは「推測能力」(へ近づく方法)だったのだ。
書かれていないことについて、手元にある基礎的事実から、飛躍的に展開できなければならない。ただし、説得力を以て。

日本の高校生が苦手とする理由が、学校にある所以である。