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チャールズ・ドジソンにとっては、専門だった幾何学の論敵としてジェイムズ・ジョセフ・シルヴェスターが現れたが、ジェイムズ・ジョセフ・シルヴェスターは、その後、「アリストテレスの論理学の完成者」クリスティーン・ラッド=フランクリンを指導し、チャールズ・サンダース・パースとも関係があった。

American Journal of Mathematics - Wikipedia

James Joseph Sylvester- Wikipedia

Christine Ladd-Franklin - Wikipedia

Charles Sanders Peirce- Wikipedia

デデキント無限- Wikipedia

1881年の「数の論理について」で、パースは自然数算術の公理化を提示した[4]。これはリヒャルト・デデキントジュゼッペ・ペアノによる公理化の数年前である。またこの同じ論文においてパースは、デデキントよりも前に、今日で言うデデキント有限性に相当する有限集合の定義を初めて与えている。これは、「その真部分集合との間に単射対応が存在する集合」という無限集合の重要な形式的定義(デデキント無限)を含意している。

チャールズ・サンダース・パース- Wikipedia

パースは

パースの純粋数学における研究は数論、線型代数学、トポロジー、リスティンク数、射影幾何学四色問題集合論ブール代数、そして連続体の研究に及ぶ。

を研究していて、チャールズ・ドジソンを重なるものもある。

さらに L の特別な元 0, 1 と単項演算 ¬ について、以下が成り立つとき組 ⟨ L; ∨, ∧, ¬, 0, 1 ⟩ を可補分配束(ブール束)と呼ぶ。

ブール代数- Wikipedia

ドジソンがヴェンをこき下ろすために示した「宇宙」がブールのアイデアだった可能性が濃い。すなわち、キャロル束は ⟨ L; ∧, ¬, 2, 0, 1 ⟩だ。

ブール論理(ブールろんり、英: Boolean logic)は、古典論理のひとつで、その名称はブール代数ないしその形式化を示したジョージ・ブールに由来する。

ブール論理- Wikipedia

そして、この「2」、すなわち"all"が、無限と関わる

おそらく、ドジソンの最大のライバルは、本当は、チャールズ・サンダース・パースで、ドジソンは、無限を意識することで、ブールとラッセルらを繋ぐ議論もしていたのではないだろうか。

ドジソンの着眼点で注目すべきなのは、

  1. 論理をマトリックスで構成したこと
  2. (斉一な)無限を内部化し(逐一な)有限操作で扱えることを示したこと
  3. ツリー(法)を用いた論理を考案したこと※1
  4. 再帰文の就中述語から無限を構成したこと※2

※1 P.226記号論理学,数の国のルイス・キャロル

第Ⅰ部をめでたくマスターし、オリバー(引用者註:『オリバー・ツイスト』)のように「もっとください」と言いたくなった読者のために、第Ⅱ部にはやや割りにくいナッツを揃えたいと思います。それらを割るためには、読者が持っているクルミ割り器をすべて動員する必要があるでしょう。

(中略)

 でもチャールズ・ドジソンは、『記号論理学』第Ⅱ部を完成させる前に亡くなりました。第Ⅱ部のための準備として命題数が50もある例や、このようなパズルを解くために彼が考えた一般的な方法(”ツリー法”)、それにこれからご紹介するさまざまな論理パズルや逆説をすでに作っていました。一部はすでに印刷所から校正刷りが出ていましたが、紛失してしまい、彼の死後長年経ってやっと見つかりました。

※2 P.235,亀はアキレスになんと言ったか,数の国のルイス・キャロル

後年、バートランド・ラッセルはこれと、さきほどの床屋さん問題を、論理学に対するドジソンの最も偉大な貢献であると述べました。

  1. 同じものと等しい複数のものは互いに等しい。
  2. この三角形の二辺は二つとも同じものに等しいものである。
  3. この三角形の二辺はお互いに等しい。

3が真であると認めるには、

  1. 同じものと等しい複数のものは互いに等しい。
  2. この三角形の二辺は二つとも同じものに等しいものである。
  3. 1と2が真ならば4は必ず真
  4. この三角形の二辺はお互いに等しい。

4が真であると認めるには、3が真であると認める必要がある。

  1. 同じものと等しい複数のものは互いに等しい。
  2. この三角形の二辺は二つとも同じものに等しいものである。
  3. 1と2が真ならば4は必ず真
  4. 1と2と3が真ならば5は必ず真
  5. この三角形の二辺はお互いに等しい。

5が真であると認めるには、4が真であると認める必要がある。
以下同じ。
本文中では、1,2,3は、A,B,Zで表記されていてむしろ有限のうちに無限を見出す趣が意識されているのが特徴であり(すなわち、ゼノンの第3問題「アキレスと亀」を第2問題「無限分割」に帰着させるオーソドックスなものとなっていて、ここらへんも、ユークリッド幾何学を知ってはいても「現実の幾何学的世界とは無縁と考え、拒絶し」(P.110)たドジソンの特徴が見られる※3。おそらく「無限遠点」をうまく与えることができれば、また違った回答もあっただろうからだ。現代の私たちのこの問題への理解に逆説的であるが示唆を与えている。ただ、タグの性質上、ここでの表記はこうなった。)、また会話風の説明になっている。

※3 ドジソンもユークリッドの第5公準を研究し、ほかの公準からこれが求められないことを認めていた。アンチ・ユークリッドの勢いを見て、ユークリッドを擁護するために書いた『ユークリッドと現代のライバルたち』(ライバルたちとの論争にユークリッドが勝つこととなっている)でも触れていて、さらに
「ドジソンはこれらの結果を証明しようと真剣に努力しましたが、でもだめでした」(p.110)しかし「1888年に彼は『おもしろ数学,第Ⅰ部:平行線の新理論』という本を書き、第五公準をもっと’自明な’結果に置き換えることを考え」(〃)た。
それが、

どの円においても、その円に内接する正六角形は、その外の切片のどれよりも大きい

ドジソンが考えた代替公準(P.111図)である。彼は円を正方形化する難問(1882年にフェルディナンド・リンデマンが否定的に解決。つまり、不可能である。)について、「はさみうちの方法」を用いて、述べている。

その面積の正しい値が何であれ、それはとにかく半径を辺とする正方形の3.1417倍よりも小さいか、3.1413倍よりも大きいのです。
ドジソンはたまたま小数第4位の数を示したが(これは有名な幾何学者である彼を悩ませた数学のファンが今でいう凸してきたから、素人にも計算が容易な「データ」(P.114)を例として示したのであった。)、彼の本意は、πが無理数であることだった(ドジソンは外接正方形と内接正方形との比較から「だから、4より大きい数や2より小さい数はまったく馬鹿げている」と述べている)。
 

1847年 「論理学の数学的分析」(Mathematical Analysis of Logic)発表

ジョージ・ブール- Wikipedia

ブールはなかなか認められなかった。ドジソンは「童話作家」として大成した。
ブールは地図を残した。ドジソンは写真を残した。

ドジソンは、ラッセルに先立つ「論理学者」としては、認められていない。
ひとこと寓話として触れられるのみである。

ラッセルのパラドックス/現実と数学の区別が付かない
ラッセルのパラドックスとカントールのパラドックスがよく似ている件/現実と数学の区別が付かない

ドジソンの提出した上記4の無限はどちらの無限だったろうか?
ここで数学は、「公理的集合論」と「型理論」へと別れることとなったみたいであるが、ドジソンは「型理論」を示唆したのではないかと思う(すなわち、カントールの「対角線論法」を型理論的に表現するとどうなるのか)。
それがドジソンの"Predicate"による「(デカルト実在論」の矛盾の回避だったのではないだろうか。それがドジソンがカントリアンの証左であり、ドジソンなりの「カント・プログラム」の実現であると睨んでいる。

ジェームス・ジョセフ・シルベスター  1814年09月03日 - 1897年03月15日
ジョージ・ブール           1815年11月02日 - 1864年12月08日
チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン  1832年01月27日 - 1898年01月14日
チャールズ・サンダース・パース    1839年09月10日 - 1914年04月19日
クリスティーン・ラッド=フランクリン 1847年12月01日 - 1930年03月05日