Roxana

 

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『ロクサーナ』の”no flight”の意味を考える「歴史の旅」もだいぶ長くなってきた。
もう少し辛抱が必要である。『確率の出現』からホッブズを見て、そこで『ロクサーナ』以外に取り上げられたシェークスピアの『ヘンリー6世』も少し見られたらよいと思う。

そして、『エマ』に戻り、『フランシス・ソヴァ―ル』に戻れるのである。
もともと、『フランシス・ソヴァ―ル』の「運」と「驚き」について考えていたのだ。
いまでは想像がつくようになった、フランシスの突然の来訪が、蓋然的であるがゆえに驚くべきことではなかったことが。ただ、いまだにわからないのは、オマールエビが「裏切る」ことである。しかし、それはおそらく、蓋然的ではなかったのだろう。オマールエビこそ、『ロクサーナ』における、「6つの部屋」だからである。

This was the first View I had of living comfortably indeed, and it was a very probable Way, I must confess; seeing we had very good Conveniences, six Rooms on a Floor, and three Stories high : While he was laying down the Scheme of my Management, came a Cart to the Door, with a Load of Goods, and an Upholsterer's Man to put them up ; they were chiefly the Furniture of two Rooms, which he had carried away for his two Years Rent, with two fine Cabinets, and some Peir- Glasses, out of the Parlour, and several other valuable things.

P.32,Roxana by Defoe, Daniel, 1660 or 1-1731; Mullan, John, (Ed.) | INTERNET ARCHIVE


 

中世の認識論の中では、臆見は蓋然性と同類であった。臆見を使用しなければならなかった低級な経験主義者たちには、同等に重要な別の概念がある。それはしるし、、、sign)である。必然的に、シェイクスピアがこれを記録している。「これらすべてのしるしの中で最も少ないのが蓋然的プロバブルであった」(HneryVI.2.78)。

P.46,第三章臆見,『確率の出現』

いきなりぶっ飛ばしていて最高潮にわからないのであるが(気分が昂る。ふざけるなという意味である。)、ここで「低級な経験主義者」とは、「天文学幾何学、力学といった「高級科学」」(P46)の科学者たちではなく、ベーコンの排撃のターゲットとなった「特に教義的なアリストテレス主義と錬金術による経験主義」(p.44)者たちであっただろうし、特に、上に続いて述べられている、医学者たちだっただろう。

It cannot be but he was murdered here ; The least of all these signs were probable.

P.111,The Works Of Shakespeare The Second Part Of King Henry The Sixth (1909) by Hart H. C. | INTERNET ARCHIVE

らしい。翻訳はほとんど意味を伝えていないようだ。

177, 178. It cannot he ,. . probable] 64(1/2), 65. the least of these are probable, It cannot chuse but he was murthered.
64,65☞The Works Of Shakespeare The Second Part Of King Henry The Sixth (1909) by Hart H. C. | INTERNET ARCHIVE

脚注が付いているが、なおさらわからなくなった。
なぜなら、原文の”were”がわからないからだ。
しかし、「最上級」とは”degree”であって、対象を直接指示するのではなく、degree()=”superlative”という評価が与えられる対象(群)を入れる枠組みのことだ。間接的な表現である。すなわち、(複数の){all these signs} の中に (複数の){the least | these signs} が some 在る とき(評価L)、それが probable だったと言っている(評価P)。何がどう the least なのかである。即ち2つの評価(L/P)の関係である。
つまり、言いたいのは、

  1. もっとも小さい或いは少ない痕跡群が、是認された。(①)
  2. もっとも可能性の小さい痕跡群だった(②)

のいずれかであるのか?いや、1だと思うのだが、2と同じ意味なのかである。
修辞的に、譲歩構文(Even the least)であってもかまわない。(③)
but = that not だろう。このとき、it = that である(強調構文であるがそればただの「名」であると思うからあまり気にしないようにしている※)。
※ここで「名」でなく「形式」と言ってしまうと、強調構文と形式主語が混乱してしまうので、「名」と言う。

脚注では、”chuse”が使われる。choose(選ぶ)の古語だ。目的語が”the least”の倒置法だとして、”are probable”が”these”に係っていて、その評価群について言っており、itは同じように強調構文で、 but=thatnot 以下を主語とするならば、

[彼がここで殺されなかったこと]が[最も小さい可能性]を[選ばなかった](④)

Aここで殺された Bここで殺されなかった
a可能性上位群 b可能性中位群 c可能性下位群

のとき、Bとaもしくはbの組み合わせになるならば、ここで殺されなかった可能性が高いこととなる。

そうだろうか?

butが名詞節でchuseの目的語になっていると考えると、can not chuse that (he was not murdered) 

何が?it = the leastだろうか?

つまり、カンマを用いることで、(S do OからのOSdoという倒置として円滑な一連の流れとせずに、句切れを入れて)並列(S,S’ do ;S=S':和訳としてはS'たる it 即ちS)にしているということだろうか(⑤)。
つまり、主語の it は何を指しているのか。

ただ、脚注が意外に多い(☟note2)。

It cannot be but thou hast murdered him.

A midsummer night's dream by Shakespeare, William, 1564-1616, author | INTERNET ARCHIVE

負けてしまった。

購入した。28円で届くのを待っていられなかった。

答え合わせ。

公爵がここで虐殺されたことはもはや疑う余地はない、
いまあげたどの一つをとっても十分すぎる証拠だろう。

ウィリアム・シェイクスピア. シェイクスピア全集 ヘンリー六世 第二部 (白水Uブックス) (Kindle の位置No.1290-1291). 白水社. Kindle 版.

前段に、

A dreadful oath, sworn with a solemn tongue !
What instance gives Lord Warwick for his vow ?

P.109,The Works Of Shakespeare The Second Part Of King Henry The Sixth (1909) by Hart H. C. | INTERNET ARCHIVE

があって、これが、

恐れおおいみ名にかけての恐るべき誓いだな!
ウォリックはそう誓言するたしかな証拠をおもちか?

ウィリアム・シェイクスピア. シェイクスピア全集 ヘンリー六世 第二部 (白水Uブックス) (Kindle の位置No.1279-1280). 白水社. Kindle 版.

と訳されている。
つまり、①+③だったようだ。
すなわち、


  彼がここで殺されなかったなんてことはありえない。
  これらのすべての痕跡のうちからどんなに小さなものたちを挙げても是認された


②、④は考えられない。
⑤はどうなのだろう?it は何を指しているのか疑問が残った(☟note1)。

このとき「是認された」と過去形なのは、「公の権威」のお墨付きを「得た」ということであるが、「それは、証言と権威の公書(writ)によって支持されていることを意味している」(P.40,第三章臆見,『確率の出現』)のであるだろう。
そう思って”writ”で本文に検索をかけたら、これがキーワードになっていることがわかった。『ヘンリー6世』はそういう話のようである。

Now, pray, my lord, let 's see the devil’s writ.

P.48,The Works Of Shakespeare The Second Part Of King Henry The Sixth (1909) by Hart H. C. | INTERNET ARCHIVE

ところで、その悪魔の書きつけを見せてもらおう。

ウィリアム・シェイクスピア. シェイクスピア全集 ヘンリー六世 第二部 (白水Uブックス) (Kindle の位置No.509-510). 白水社. Kindle 版.

こうなると、”sign”と”instance”のニュアンスが、事前の”writ”と照らし合わせる内容を持つ。照合事実の「認証」「挙証」である。
全文を読んでいないのでピンと来ないが、そういった伏線が「あった」と言うことだろうか?


何が足りなかったか、反省しよう。
今まで簡単に本を購入してきたけれど、この700円ほど堪えた出費があったかわからない。
正直に言って、軽い敗北感に苛まされている。
よい勉強になった。
卑下はしたくないが、受験するには難しい実力だな。弱った。

☞【note1】

受験英語」のいわば「再履修」組としては、「文法」と「論理」の間に在る「記号操作」の理解もターゲットに入ってくる。
「文法」だと「語彙」がターゲットで、これはフランス語でより顕著になるけれど、記号の「含意」が和訳でなおざりになりやすいことが気にかかる(本当は、近代的な日本語でも、記号をどう扱うかってあったと、国語の教科書で読んだと思うけれど)。
例えば、『フランシス・ソヴァ―ル』だと;(セミコロン)を多用しているから、その「意味」を考えないわけにはゆかない。これを無視して読解できない。

適当なところでは、並列の機序に従う。同形態、同意義が問われるので、多くの場合、「すなわち」「そして」「また」くらいが健全或いは穏当だろうか。

先ほどのカンマも、andの補助記号であるから、同意義と考えると、自然なのだろうか。すなわち、the leastが、意味上の主語である。

いや、知らない。今後、勉強の過程で意識してゆく「宿題」となった。

☞【note2】

178. The least of all these] Compare Locrine (by Peele and Greene ?) : “ God knows it were the least of all my thought ” (i. i.).

A midsummer night's dream by Shakespeare, William, 1564-1616, author | INTERNET ARCHIVE

BRUTUS.

Nay, Corineius, you mistake my mind
In construing wrong the cause of my complaints.
I feared to yield my self to fatal death!
God knows it was the least of all my thoughts;
A greater care torments my very bones,
And makes me tremble at the thought of it,
And in you, Lordings, doth the substance lie.

Shakespeare. Locrine; Mucedorus (Kindle の位置No.176-179). Kindle 版.
Locrine; Mucedorus by Shakespeare | Project Gutenberg

instance/substance

英語 substance(物質)と同じ語源をもつ。

instance 意味と語源 | 語源英和辞典

時代背景を考えるべき、ということだろうか。すなわち、(或いは実在論を背景に持つ)神判である。

Locrine was entered into the Stationers' Register on 20 July 1594 and published in 1595 in a quarto issued by printer Thomas Creede. Individual scholars have proposed dates for the play from the early 1580s on; many have favored a date c. 1591, based on the play's links with other works of the era. It has been argued, for example, that Locrine borrows from the Complaints of Edmund Spenser, published in 1591,[1] and from The Complaint of Elstred, a poem by Thomas Lodge, written c. 1591, that circulated in manuscript before its first printing in 1593. The question of the play's date is complicated by the question of its authorship; if Charles Tilney was the play's author (see below), it must date prior to Tilney's death in 1586.[2] 

Locrine-Wikipedia

高いなぁと思って、紹介文を読むと、パブリックドメインだという。
https://onlinebooks.library.upenn.edu/webbin/book/lookupid?key=olbp41471

なんと、電子図書館の「窓口」みたいなサイトまである。

I know the least of my demerits merit this miserable death ; but wilfull striuing against knowne truth exceedeth all the terrors of my soule. 

p.59,The dramatic and poetical works of Robert Greene & George Peele : with memoirs of the authors and notes by Greene, Robert, 1558?-1592; Peele, George, 1556-1596; Dyce, Alexander, 1798-1869 | INTERNET ARCHIVE

なんかよくわからないが、話がややこしくなっている。