丘陵地の平凡な丘の一つの上に立つカーラの家へと続く一本道

 

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アリスマンローのジュリエット(Runnaway)の冒頭文
冠詞、定冠詞、代名詞に〇をつける訓練ができる。

Carla heard the car coming before it topped the little rise in the road that around here they called a hill .

Runaway by Alice Munro

車が、このあたりでは丘と呼ばれているちょっとした勾配を上り詰めるまえに、カーラはそれがこちらに向かってくる音を聴きつけていた。

ジュリエット 小竹由美子訳

Carla      カーラから回す/カーラへ寄るのか

heard        listenと比較されて、(聞く)行為/(聞こえてくる)状況
        →知ることによる場面の展開

the car     the① 

coming  進行形のアスペクト。予定される動作の終了地点は

before

it     =the car

topped     

the little      the②  ーtaht~

rise

in the road  the③   

that

around here

they

called

a hill .           a①

 

カーラはこのあたりで丘と呼ばれるなだらかな坂の1本道をその車が上がりきる前にこちらへ向かっているのに気づいた。

【検討】

①坂道の上に家があるのか。坂の途中なのか※
 「手前」なのか/「先」なのか/「前」なのか
②1本道なのか。a hill/the roadの対比
③向かっているのか、到着するのか
④聞こえたのか。気づいたのか

翻訳は、遠景→近景のセオリーで訳しているが、カーラを中心に話を展開することを宣言すべきではないか(→heardが状況を作ってゆく)。遠景は(カーラの)背景となる。リズムが悪く、もたついている。なんとかならないものだろうか。

どう訳すのが正しいニュアンスになるのだろう?わからない。
英語で「手前」は何と言う?「right before」を使った英語表現

 

なるほど、『蹴りたい背中』『悲しみよこんにちは』で見た、論理(的)の〈は〉と同じだろうか。

 

カーラがこのあたりで丘と呼ばれるなだらかな坂の1本道をその車が上がりきる前にこちらへ向かっているのに気づいた。

 

カーラがこのあたりで丘と呼ばれるなだらかな坂の1本道をその車が上がりきる前にこちらへ向かっているのを聞いた。

 

こちらの方がよいだろう。カーラの負荷が軽くなった。
ただ、これだと、カーラー聞いた/車ー向かっている、がたすき掛けになって混乱する。ここで想像力が要る。日本語だから理解しにくいのではなく、英語だって、アメリカ人は混乱するだろう。ということは、反対に、混乱しないシチュエーションがそもそも予定されていて、自ら混乱を作り出していただけではないのか、という反省だ。
すなわち、カーラの家は、丘の上に在る。
進行形の終着は on the top of the hill

 

カーラがこのあたりで丘と呼ばれるなだらかな坂の1本道をその車が上がりきろうとする前に気づいた。

 

ここで、the①の制限が、何を以て効いているのかの理解が試されるのかもしれない。
the car → it 以下の説明で修飾されて在ることの制限だ。
ならば、 その → 丘を上がる の説明で修飾されて在ることの制限である。
したがって、

 

カーラがこのあたりで丘と呼ばれるなだらかな坂の1本道をこちらへまさに向かっている車が上がりきろうとする前に気づいた。

 

句読点で意味の区切れを整える。

 

カーラが、このあたりで丘と呼ばれるなだらかな坂の1本道を、こちらへまさに向かっている車が上がりきろうとする前に、気づいた。

 

ココで必要とされたのは、①語彙の理解、②文法の理解に加え、③作者への信頼、④読者への信頼で、①と②については、特に冠詞、定冠詞と代名詞の理解を中心に、③については、直接書かれていないけれど原文の読解に関する十分想像の余地があること(カーラが丘の上の家の中で待っている状況。)、④については、直接書かないけれども訳の読解に関する十分想像の余地があること(車の走る音で近づいてきているのに気づいたこと。)である。

ここで最後に a/theの違いに拘り、a hill への作者の意図を(敢えて)考えれば、

 

カーラが、このあたりで丘と呼ばれる、ゆるやかに続く起伏に走る1本道を、こちらへまさに向かっている車が上がりきろうとする前に、気づいた。

 

つまり、丘陵地で、丘がいくつもあるのだ。そのうちの平凡な一つに私の家に繋がる道が特定されて在る。
ただ、これだと、説明過剰で、いきなりうんざりしてしまいそうだ。そこもまた④の読者への信頼で、省略してよいかもしれない。

最後まで迷うのは、theの扱いで、修飾されて在って特定的なのか、(断りなく)もとより唯一的なのか。
「1本(道)」は抜くことになるだろうか。そこらへんの(onlyなどとの)ニュアンスである。

 

【学習のまとめ】

1.冠詞、定冠詞、代名詞について

 (1)冠 詞:One (在る)なのか、One oh them(平凡な例)なのか
 (2)定冠詞:修飾されて特定的なのか、断りなく唯一的なのか
 (3)代名詞:一般人称代名詞

2.翻訳について
 (1)語彙
 (2)文法
 (3)作者への信頼
 (4)読者への信頼